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鳥取地方裁判所米子支部 平成5年(わ)48号 決定

主文

本件の保釈許可決定を取消す。

理由

被告人は、その所属していた暴力団を平成五年七月ころ破門されたが、右暴力団の関係者から数百万円の借金があり、その支払いができていないため、被告人が保釈されたと聞き及んだ債権者から厳しい催促や暴力団関係者から被告人の居所の問い合わせが何度もなされるなど、被告人は、生命身体に危険を感じる事態となつていること、金三〇〇万円の保釈保証金のうち、被告人がその趣旨を明らかにしないで借り受けた知人二名から、合計金七〇万円を至急返済するように迫られているため、保釈保証金の返還を受けることが必要になつたこと等を理由として、被告人は、保釈の取消を強く希望するに至つた。

刑事訴訟法九六条一項は、保釈の取消ができる場合を規定しており、本件の場合にはその規定する場合には該当しないが、右規定は、被告人の意思に反して保釈の取消ができる場合について規定したものであつて、被告人が保釈の取消を希望し、かつ、その取消をなすことに相当の理由がある場合には、裁判所は、職権で保釈の取消ができるものと解することができ、本件は、そのような場合に該当する。

よつて、主文のとおり決定する。

(裁判官 宮本 敦)

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